強引専務の甘い手ほどき
みなとみらいの海からの夜景と打ち上げられた花火がとても綺麗だ。
専務と立ち止まって花火を見上げる。
花火が打ち上がるたびに大きな音と、歓声が上がる。
パッと夜空に広がる大きな花火は
息を飲むほどに綺麗だ。

私は空を見上げたまま、
「こんな風に花火を見たことはありませんでした。とても綺麗ですね。」と隣の専務に言うと、
「カエデと見られて良かった。来年も一緒に見たいな。」と言う専務の声に、
「秘書室をクビにならない様に頑張ります。」と専務を見上げると、
後ろでプッと笑い声がして、
「俺もクビにならない様に気をつけよう」と石神さんの声がする。
「余計な事を言うと、拓也はクビな。」と専務の笑い声。
「…カエデさんってかなり天然なんですね。今のは私にも分かった気がしますけど…。」
と美鈴さんがクスクス笑って、
「吉野さんも気をつけないとクビになるよ。」と石神さんが可笑しそうに言う。
「私の雇い主は専務じゃありません。」と美鈴さんが笑って、
「そうだったな。」と専務がクスクス笑った。

「上野さんの言う通りでした。」と美鈴さんがポツンと言ったので、
「何?」と石神さんが聞くと、
「きっと、こうなる気がするって。」と笑った声で言う。

「やっぱり、キサラギを見ている人にはわかるよな。」と石神さんがいう。

「…さっきからいったいなんですか?」と私が後ろを振り返ると、
2人の秘書は空を見上げたままで、
「なんだろうね。」と石神さんがいい、
「わかりません。」と美鈴さんが笑った。

いったい何?
なんで私にはわからないんだろう。

そう思ったけど、

空に広がる大きな美しい花火を見ていたら、
そんな事は気にならなくなってしまった。
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