強引専務の甘い手ほどき
まだ、紺野さんに会ってなかったのに…と、
私が怒ったのが分かったのか専務はおとなしく車のシートに座り、
「とりあえず飯にしよう。」と私の顔をみる。
私が頷くとちょっと笑って、上杉さんに指示をした。

「着いたよ。ここのフレンチ。」
とみなとみらいの背の高いホテルに車が停められた。
私と専務が降りると、
石神さんはまだ仕事があると笑って車に乗ったまま手を振った。

68階のフレンチレストラン。
ここのホテルは港の景色が一望できる。
個室の窓から眼下に美しい夜景が広がっている。

どのお料理も手が込んでいて、
彩も豊かで美しく、とても美味しい。

「こんなに上から見ると、観覧車も小さく見えるな。」と、
専務はデザートの前にお行儀悪く席を立ち、私の手を取り窓際で夜景を見る。

「カエデ、怒ってるのか?」とそっと、手を握る。

「なんでこんなに私に構うんですか?」
と私が溜息をつくと、

「俺はルピナスの跡取りで専務っていう、立場を考えて結構我慢してきた。
拓也にも、ずっと、問題を起こすなって言われてたし、
俺と一緒にいるようになったら、
いろいろ言う奴がいて、カエデを傷つける事になるかもって思ったし
でも、もう、だめだ。
本店の結城ってヤツも、カエデのこと好きそうだし、
こんなに毎日そばにいるのに、
カエデを見てるだけなんて、もう無理だ。
初めて会った時、落ち着いて見えるのに、
慌てると、可愛い顔をみせるって思った。
食事を一緒にしたら、
美味しいって笑った顔が、忘れられなかった。
寝顔を見たら、
そっと、頬に触りたいって思った。
毎日顔を見ると、嬉しくて、幸せな気分になる。
好きだよ。カエデ。
俺は会った時からカエデが気になって、目が離せなくって、
そばにいて欲しくて、
今はもう、抱きしめたい。
誰にも渡したくない。
俺が必ず守るから。
カエデ。
俺をカエデの恋人にして。
俺だけを見つめてほしい。」と専務はそう言って私を見つめた。

失礼します。とコーヒーとデザートが運ばれてくる。

私達は席に戻り、
黙って、デザートとコーヒーに手をつけた。


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