強引専務の甘い手ほどき
貴重品を入れたお菓子の缶とバッグをを抱きしめ、表の階段に座る。
1Kの部屋は私のいるところなんてない。

大きくため息をついて
スマホを取り出し、
石神さんに電話する。

私はまだ、キサラギさんの連絡先さえ知らない。

電話にすぐに出た石神さんは、
「もう、引越し屋が行った?」と笑った声を出す。
「笑い事じゃ、ありませんよ。
荷物を全部持っていくんですか?」とため息を吐いて聞くと、
「キサラギの部屋、5LDKだから、カエデちゃんの部屋の荷物は全部余裕ではいるよ。」とクスクス笑う。
「部屋は解約するつもりはありません。電化製品も、ベットも、そのままにします。
…っていうか、同棲するって言ってませんけど!」と声を出すと、
「だよねえ。俺はそう言ったんだけどさ。」とまだ、笑った声だ。
「キサラギさんは?」
「会議中。喧嘩は会ってからって事で。
あと、1時間ぐらいで迎えに行きます。」とクスクス笑って電話が切れた。
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