強引専務の甘い手ほどき
1時間後には、すっかり部屋の荷物はダンボールに詰め込まれ、家電と幾つかの家具が残された。

私が荷物の確認をしていると、キサラギさんと、石神さんさんが顔を出した。
「荷物詰め終わった?」とキサラギさんが笑う。
「なんで、こんなに大げさな事になってるんですか?」と私が機嫌の悪い声を出すと、
「うん?だって、ここに荷物がなければ、戻る必要もないでしょう?」と言うので、
「ここは私の部屋です!いつだっって、戻りますけど!」と言うと、
「ここを引き払えば、家賃もかからないって思うけど?」と私の顔を覗く。

私が言い返そうとリキむと、

「はいはい。引越し屋さんが困ってるよ。
カエデちゃん。サインして。引越し屋さん、これから移動してください。
僕らも移動しよう。
あとの喧嘩は新居でどうぞ。」と石神さんが言った。

新居って訳じゃないし!!

私が怒った顔で、引越し屋さんに確認のサインをすると、
引越し屋さんは、慌てて、トラックに戻って行った。
私の怒った顔が怖かったんだと思うけど…。
しょうがないでしょ
怒ってるだから。

キサラギさんはニッコリして、
「行こうか。カエデ。」と私の肩を抱く。
「触らないで。」と顔をしかめると、
「怒った顔も悪くない。」とクスクス笑って、私の手を握って歩き出した。





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