強引専務の甘い手ほどき
黒塗りの車の中で、私がムッスリ黙っていると、
「これから一緒に住む部屋は
ちょうど観覧車の向かい側の山下公園に面したマンションだよ。
地下鉄の駅の側だから、便利かな。
そういえば、カエデって、車の運転するの?駐車場借りる?」と聞くので、
「ペーパードライバーです。車も持ってません。」と機嫌の悪い声で言うと、
「怒ってても返事はしてくれるんだね。
よかった。
…嫌われたかと思った。」とキサラギさんはホッとした顔を見せ、

「車の運転されると心配だし。
出来れば運転は止めておいてね。
俺の車でどこにでも連れて行くよ。
デートも出来てないし、休みにドライブ行こうか?」とニコニコする。

私は怒っているんですが、…デートの予定なんて立ててる場合?

「ふたりとも、邪魔して悪いけど、デートは新しい支店がオープンしてからね。
それまで休みはないよ。」と石神さんが笑う。

「ひどい扱いだな。
…もう、1ヶ月働き詰めなんだけど。
俺はカエデとゆっくり温泉にでも行きたい。」と私の頬をそっと撫でる。

「俺も一緒に休まず働いてるって事、忘れんなよ。
今日も、夕方からの会食断ってやったろ。
これからゆっくりして
明日も仕事な。」と石神さんが笑う


「カエデ。
怒らないで、仲良くして。
俺たちには喧嘩してる暇もなさそうだ。」とキサラギさんは私の身体に腕を回してくる。

こ、こら、
怒れない雰囲気を作るんじゃない!

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