強引専務の甘い手ほどき
寝室のシーツを剥がして洗濯機を動かし、
寝室の隣の部屋のダンボールを少し開いた。
衣類は寝室のウォークインクローゼットに引越し屋さんの手でもう、収まっていた。
化粧品を探し出し、寝室の広い洗面所でお化粧をし、
キッチンで冷蔵庫をあけて、自分の部屋から持ってきた、卵やハムを使って朝食を作り、
昨日炊いてあったご飯で朝食を済ませ、キッチンを片付け、
2階にもう1度戻って歯を磨き、バッグの中身を確認し、
部屋を出た。

いつもより少し早い。
きっと、私の部屋より、会社に近いから、
きっと早めに着くだろう。

カードキーをエレベーターに当てると、エレベーターがやってくる。
昨日の地下の駐車場じゃなく、1階に降りると、
当然のようにホテルのようなロビーに受付というかコンシェルジェがいて、
「おはようございます。西島様。」と挨拶をされる。

なんで知ってるの?
私がキョトンと立ち止まって、
「…おはようございます。」と言うと、
「先ほど、日野様がご一緒に暮らすことになったと、
西島様のカードキーの登録をいただきました。」と言った。

なるほど。

「行ってらっしゃいませ。
入り口のドアもカードを使ってください。」と笑顔で送り出される。
「行ってきます。」
とバッグから金色のカードを慌てて取り出し、
ドアの横でカードをかざすと、
ガラスのドアが両開きで静かに開いた。


こういうのをセキュリティの高いマンションって言うんだな。
そう呟いて、地下鉄の駅に急いだ。

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