強引専務の甘い手ほどき
結城くんのケーキはベリーを使ったピンクのノエルだ。
綺麗な色。
イチゴや、カシスや、ラズベリーなんかが綺麗に飾り付けられている。

私は微笑み、フォークを入れる。
「美味しい。
うーん。やっぱり結城くんは果物のケーキが上手ね。
甘さと、酸味が絶妙。」と笑み崩れると、

「俺の顔を見ても、そーいう顔をしてほしかったなあ。」と私の顔を眺め、ため息をつく。

私はフォークを持つ手を止める。
「ゆ、結城くんが私に好意を待ってくれてるって…」と言ってる途中で、
「もーいいよ。
俺って、モテるし、すぐに他の女の子が好きになるよ。
それにさー、カエデ先輩がいなくなって、
スゲー仕事に集中出来た。
今回のケーキ。いいでしょ。自信作なんだ。どお?」と私に聞く。

「すごく美味しいし、ルピナスらしい。って思います。」とケーキを口に入れると、

「良かった。俺もこれで、カエデ先輩から卒業できそうだよ。
アイツといると幸せ?」と私の瞳を覗く。

「私はキサラギさんが好きです。」と顔を赤くして言うと、

「ハッキリ言ってくれて良かった。」
と結城くんは大きく息を吐いて、立ち上がった。

会議室のドアを開けると、キサラギさんが急ぎ足でやって来るのが見えた。

「カッコ悪。
アイツはカエデ先輩にぞっこんだろ。」
と結城くんはクスクス笑って、声を出さずに
「ばーか。」と言ってキサラギさんの顔を見た。

キサラギさんが機嫌の悪い顔をする。

きっと、聞こえなくても
悪グチを言われたってわかったに違いない。




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