強引専務の甘い手ほどき
数日後の季節の新作の会議。

前回のように店長室で試食をする。
今回は、新しい支店のチーフパティシエの選考も兼ねてあるので、
各支店から、2、3点ケーキが提出されており、
試食の数は前回の倍以上ある。

私は嬉しいけど、キサラギさんは甘い香りに顔をしかめているみたいだ。
ちょっと笑える。

専務以外はそれぞれ慎重に試食する。

冬のケーキなので、濃厚なものが多い中、
結城くんのピンクのノエルは軽やかなクリームの中に
しっとりとしたスポンジがルピナスらしい。

ダントツに美味しい。と思う。

「これがいい。」と社長が、紺野さんを見る。

「私もそう思います。」と紺野さんが社長を見てから、私の顔を見る。

私もそっと頷く。

やったね。結城くん。
季節の新作に選ばれそうだ。


紺野さんが口を開く。
「新しい支店のチーフは結城にしませんか？」と社長の顔を見る。

私は驚いて紺野さんを見つめる。

「結城くんは、まだ若かったと思うが…。」と言う水城さんに、

「もともと才能のある男だが、今回のケーキはルピナスらしいと思う。
きっと、他のパティシエも納得するだろう。」とさらに紺野さんが言った。


「紺野の言うことを信じるよ。
新しい支店のパティシエは結城くんにしよう。」と社長が言って 私達は頷いた。

すごいよ。
結城くん。
チーフパティシエとして支店を任されることになったよ。
と心の中で嬉しい声を上げた。
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