強引専務の甘い手ほどき
身の回りの物の整理をし、
とりあえず、暮らせるくらいの荷物を準備する。

福島の実家には
兄の家族と両親が住んでいる。
兄は中学校の教師で、大学から付き合っていた2つ年下の女の子と結婚している。
兄の2人の子供達にお年玉だけ贈るのがいつもの恒例行事だ。
今年も休めない。
と電話を入れておく。

秘書室に移動になった事も、
キサラギさんとの事も家族にはひと言も話していない。

母はカラダに気をつけなさい。といつもの通りに言ってくれる。
少し、懐かしいイントネーションだ。

家を出て、10年。
販売の仕事はまとまった休みが取れないので、
お正月には
実家にはほとんど帰っていない。

兄嫁がいる実家には
お互い気を使ってしまうので、少し帰りにくい。
と思っている。

それでいい。
私は家を出ているのだから…。


自分の部屋に落ち着いて、

キサラギさんとの別れることになったら、


キサラギさんの留守の間に引っ越しすればいい。


そう思って、ふたりで暮らした部屋を後にした。


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