強引専務の甘い手ほどき
「嫌いな訳ないじゃないですか…。
でも、キサラギさん、考えて。
キサラギさんはルピナスの後継者で、
お見合いだってしたでしょう?
きっと、キサラギさんの結婚相手は
私ではない、誰かだって思った。
私を選んで、キサラギさんに後悔して欲しくない。
私は今迄楽しかった。
このまま、別れても、大丈夫です。」
と私は落ち着いた顔でキサラギさんを見る。

「俺が大丈夫じゃねーよ。
見合いなんてしてない。
つーか、
アレは親父が勝手に取引先の相手の娘も一緒に飯につれて来てただけだろ。
俺は仕事があるからって直ぐに席を立って帰ったし、
ま、あの後、オヤジは機嫌が悪かったけど…。
なんで、カエデが知ってる訳?」
と機嫌の悪い声を出しながら、私の身体を深く抱きしめる。

「それは…偶然に聞いたんだけど…。
自分は普通のオンナで
育ちも良いわけじゃないし、
お嬢さんたちみたいに、習い事もしてないし、
頭が良いわけでもない。
お見合いがわかる前から、
その前から私は
キサラギさんにふさわしいって訳じゃないって
そう思ってたよ」とため息をつくと、

「だから、見合いじゃないって。
俺にふさわしいかどうかは俺が決める。
パーティで隣に立たせてたのは
周囲に対する俺の意思表示だろ。
親父にだってわかったはずだ。
俺にふさわしいオンナは俺が愛してるオンナだ。
俺はカエデに何度も何度も愛してるって言ったろ。
俺にふさわしいオンナはカエデだけだ。
それに俺はカエデが俺と生きていくって決心するのを待ってただけだ。
手放すつもりは全くない。
やっぱり、この間妊娠させとけばよかったか?」
と、ものすごく機嫌の悪い顔をする。

いや、えーと、
「そ、それは…」と下を向いて赤くなる。
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