強引専務の甘い手ほどき
コンコンとノックの音がして、
白衣の女性医師がやって来た。

「目が覚めましたね。
過労と説明しましたが、少しお話があります。
ここにいるのは恋人だって、言ってましたね。」
と病室で私の手を握ったままのキサラギさんの顔を見る。
私がうなずいてみせると、
石神さんは部屋を出て行く。

背筋の伸びた女医さんは私の隣に座り、
「西島さんは妊娠していますね。
妊娠初期ね。エコーでみたら、多分、8〜10週くらい。
最終月経とか聞いてないから、はっきりは言えないけど…
体調が優れなかったのはそれもあるかな。
落ち着いたら、産婦人科に受診してくださいね。」と私の顔を見た。

私は驚いて声が出ない。

「困る?恋人と良く相談して。」と医師は表情を変えずに立ち上がる。

「困りません!やった!カエデ、俺は嬉しい!」とキサラギさんは大声を出した。

医師は振り返り、ちょっと微笑む。

「恋人は喜んでるわ。
じゃ、明日検査に異常がなければ帰れると思ってて。」と病室を出て行った。

入れ替わりに石神さんが戻って来た。
「キサラギ、妊娠させたのか?」とため息を吐いて笑顔を見せた。

「そうだよ。悪いか?」とキサラギさんはニコニコ私の頬を撫でる。

「いや、早々に籍を入れないとな。」と石神さんは私に笑いかける。

「ご、ごめんなさい。仕事忙しいのに…
ちゃんと、気をつけてもらってたのに…」
私が赤くなりながら、とシドロモドロにやっと、声を出すと、

「いや、俺は最近気をつけてなかったよ。
酔っ払ってても、カエデが俺のこどもが欲しいって言ってくれたから、
きっと本音だって思ったし…。
あれからカエデは否定的な事は言わねーし、
俺の事好きだって何度もいったろ。
だから、こどもが出来てもいーんだって俺は決めて、
…ひとりで妊活ってヤツをしてた。」とキサラギさんは「よしっ」と、ニコニコしている。

嘘お?!
さっきはそんな事言ってなかったじゃん…



< 94 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop