乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
二人が知る真実
目を覚ますと、見知らぬ天井だった。杏樹は、頭の中を整理をして、自分が絵梨たちと前で倒れた事を理解する。
手に繋がれた点滴の落ちる水滴をボーと眺めていると、近くに心配そうな顔をした、絵梨と渉、なぜか悠一がいたのだ。
「あっ、私…ここは?」
「杏樹!良かった!気分は?」
「うん、大丈夫。私、どうしたんだろう。」
「身内じゃないと話せないって言われて…先生読んでくる!渉、杏樹ちゃんと見ててよ?」
「はいはい。」
慌ただしく出ていく絵梨を渉は苦笑いしながら見送る。
杏樹は、体を悠一に向けた。待ち合わせした絵梨と渉がいるのは分かるがなぜ悠一がここにいるのだろうかと思っていると、悠一が口を開いた。
「ここ、社長が入院してる病院なんだ。」
悠一に言われ、ああそうかと納得する。
「身内に連絡してくれと頼まれたんだが、連絡先分からなかったから、白愁先生に連絡したんだ。もうすぐ来ると思うから。」
杏樹は曖昧に笑った。身内を呼ばないといけないくらい、何か悪い病気なのだろうかと考えていると、絵梨が医師を連れて戻ってきた。
「立花さん、お加減いかがですか?」
40代くらいの男性医師に杏樹は声を掛けられ、頷いた。男性は、近くに来ると周りを見渡しながら頭を下げる。
「立花さんは独身ですか?」
「はい。」
「お付きあいしている方は?」
「……いません。」
「頼れる身内は?」
「父がフランスにいますが…それが、何か。」
杏樹は首をひねりながら医師の質問に答えていく。周りのみんなは聞いていい内容なのかと思いながら、部屋の隅に3人並びたっている。
「……妊娠、してますよ。今、六週目です。」
「「「妊娠!?」」」
状況を飲み込めない杏樹の代わりに、3人が声を揃えて驚く。医師は頷きながら、まだ話を続ける。
「それに双子です。」
これがでない3人と変わり、次は杏樹が声を出す。
「双子!?……一人で二人も育てれるかな?」
その言葉に医師はピクリと反応した。
「……父親は?一人で育てるなんて、大変ですよ?」
「……先生。予定日はいつくらいでしょうか?」
「夏頃です。」
病室は静まり返り、3人は杏樹に何て言っていいか分からず、気まずい雰囲気が流れる。誰もが、父親は雅輝だろうと思っているが、口に出さない。
しかし、妊娠を告げられても慌てない杏樹に、絵梨は疑問をぶつけた。
「杏樹…もしかして、気がついてた?」
杏樹は絵梨に向かって微笑んだ。
「私、ずるいよね……。妊娠すればいいのにって、ずっと思ってた。」
そう、あの日から。