乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ふたりは似た者同士
鼻をくすぐるラベンダーの香り。
うっすらと目を開けると、真っ白い物体がある。
杏樹は自分がこの物体を抱き締めていることに、ふと、気が付き、物体を確認する。
「…うさぎ…?」
杏樹は、なんで自分がうさぎを抱き締めているのか、考えるが、頭が痛くて、起こした体をまた、横にした。
よく見ると、知らない天井が広がり、至るところにメルヘンチックなうさぎやいぬのぬいぐるみが置かれている。
自分は一瞬、メルヘンな世界に来てしまったのではないか、夢を見てるのではないかと考えるがすぐに打ち消す。
昨日のことを振り替える。会社でのこと、絵梨たちと飲んだこと、それから、それから、と考える。
「…ここ、どこ…!?」
杏樹は、自分がどこにいるか分からず、取り合えず扉に向かって足を進めると、扉の向こうからは、トントントンと一定のリズムが聞こえる。
「……あの…。」
扉から少し顔を出して、控えめをかけると、帰って来たのは低く異様に艶っぽい男性の声だった。
「んー。起きたか?」
杏樹を見ずに、リズミカルな包丁の音を奏で、近くにあるカフェテーブルに座るよう促され、杏樹も何も言わず、従う。
カフェテーブルには、ご飯に味噌汁、魚に、ひじきと、和食が並べられていた。
どうやら男性は、味噌汁にいれるネギを切っていたようで、味噌汁にネギを振りかけると、杏樹の前に座った。
「お前、飲みすぎだよ。」
「…はい、ごめんなさい。迷惑かけてしまい、すみません。」
見ず知らずの男性に、迷惑をかけてしまったことを素直に謝り、頭を下げながら、ちらりと、男性を見る。
体格はがっちりしている。さっきの立ち姿から長身だろう。無精髭に、少し長い髪を後ろで束ねている。切れ長でクールな印象だが、そうじゃないような気もする。
「おれ、連条雅輝。お前は?」
「立花、立花杏樹です。」
「ふーん?とにかく、食べれば?」
お腹が空いていたようで、その言葉がありがたいなぁと思いながら、味噌汁に手をつける。