無愛想天使
「ごめんね。待った?」

「いや」

「無理言ってごめんね。でも無理ついでに、もう一つ…今日だけでいいから、前みたいに笑ってくれる?」

「…おう。最後…だからな」


最後…


自分の誘い文句でも使った言葉なのに隼人に言われると心に刺さる。

でも、今はそんな事は気にしちゃダメだ。

歩き出そうとすると、スッと左手を差し出された。

「前みたいにするんだろ?だから、手…」

「…うん」

手を繋いだ。

繋がっている右手。

施設に居る時、泣いていても笑っていても、よく隼人に手をひかれて歩いていた。

繋がっている手の先には、今は一番遠い人。

一番近くて、一番遠い。



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