無愛想天使
俯いていると、抱き寄せられ今度はこれが最後のお願いだからと言ったあと一言だけ呟いた。



『乃々香』



私の頭上から降ってきた言葉は自分の名前だった。
出会って初めて、呼び捨てにされた。声はかすれていて泣きそうなのを我慢し、振り絞って声を発しているのが分かる。
そこに、いつもの大翔の姿はない。だから、ただ名前を呼ばれただけなのにこちらまで泣きそうになった。“切ない”そんな一言では言い表せなくて、いたたまれない気持ちになった。



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