俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
熱帯低気圧発生?


今日も変わらず始業一時間前には会社に入り、デスクを拭いたり、ゴミを集めたり、給湯室の準備をする。

後一週間で7月だ。
梅雨にも関わらず、今年は雨が少なかった気がする。
お気に入りの定位置で窓の外を眺める。
今日も暑くなりそうだ。


「おはよう。相変わらず早いんだな」

聞き覚えのある声がして、誰かと考える間もなく反射的に体を向け挨拶を返した。


「おはようございま、、、す?………………あれ?」

「ククッ、なんで疑問系?」

「えっ?いや、だって。加藤さん、どうしたんですか?」


そこに居たのは、居るはずの無い加藤だった。


「あれ?聞いてない?俺7月からこっち戻ってくるんだけど」

「いや、華ちゃんから聞きました。でも、今はまだ6月ですよ?」

「うん。今有給消化中で、引っ越してきたから部屋片付けてたんだけど、こっちにいるなら出てこいって川北次長に言われてさ。あのおっさんも相変わらずだね、俺部屋の中全然片付けてないのにさ」


そう言いながら私の頭を撫でくりまわした。
やめてほしい、本当に。
その手をやんわり外し、手櫛でかるくととのえながら、ペコリと頭を下げた。


「そうですか。それはお疲れ様でした。お久しぶりですね、又宜しくお願いします」

「笠原も元気そうだね。相変わらずちっこいな、全然変わってねぇ」

「もうこの年でそんに変化は無いですよ」

「クククッ、まぁね。俺も変わってないでしょ?」


久しぶりのやりとりも、ブランクを感じさせないほどスムーズで。
思わず頬が緩んでしまう。


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