俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
週末の今日、いつもならこのまま家に帰るだけなのだが、ここ最近は恭一とずっと一緒に過ごしていた。
伺いを立てるべきか、このまま帰るべきか考えあぐねていると、
「今日、華さんに誘われてるから飲みに行くよ。片付けたらエントランスで待ってて」
そう誘われた。
どうするのか考えることじゃなく、一緒に居ることが当たり前のような口ぶりが嬉しかった。
いつもの居酒屋『まる太』うちの会社の人たちがよく利用していて、滅多に飲みに行かない私でも来たことのあるお店だった。
「なんでこいつがいるんだよっ」
「お前ね、俺先輩だよ?」
あからさまに不機嫌な恭一の前に座ったのは加藤だった。
苦笑いしか出来ずにいると、華が横から口を挟んだ。
「加藤から頼まれたのよ。あれから杏とも不自然な感じだし、もう一度ちゃんと話したいって。でも、一対一だとあんたが煩いでしょ。だからちゃんとあんたの前で話そうとしてるんだからいいじゃない」
「笠原。この前は本当に悪かった。もう2度としないから、同期として又宜しくお願いします!」
机に額をつけるように下げて謝る加藤の姿を見て、あわてて顔をあげてとお願いする。
「俺笠原のこと好きなんだよ、いやっ恋愛どうこうじゃなくて、小早川睨むなっ、笠原と話したり構ったり何て言うか本当に妹みたいに思ってて……まっ、まぁこの前は笠原が可愛いすぎてぶっ飛んじまったんだけど、もう絶対しないからっ」
「クスクスクス。はい、大丈夫です。もう忘れました。これからも宜しくお願いします」
「チッ、」
「笠原ーーーー!」
ガタンと席を立って回り込んで頭を抱き締められた。
勢いがありすぎて首が絞まる。
ぐぇっと可愛くない声が出て、隣の恭一が加藤の頭を叩く。
「おいっ!」
呆れた顔で華がため息を着いた。
「結局変わらないのね」