俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
先週末、恭一は暫く週末は会えないと言っていた。
ならば、明日は食材の買い出しに行こう。
今週は月初のわりに忙しかった。
少しゆっくりしたいな。
ぼんやりそんなことを考えていたら、自然と瞼が落ちてきて気づけばご飯も着替えもしないまま寝てしまっていた。
鳴り続ける携帯の着信と振動が遠くから聞こえる。意識が段々と覚醒していき、それが自分の携帯だとやっと気付く。
電話…………?
携帯をとろうと画面も見ずにタップする。
「………………はい、、、」
「クククッ、杏?寝てた?」
久しぶりに聞く恭一の柔らかい声と笑い声に、胸のなかがじわりと温かくなった。
「ふふふ。寝てしまってたみたいです。久しぶりに声が聞けました。なんだかくすぐったいです」
眼鏡をかけたまま寝落ちていたせいで、眼鏡のあとが少し痛く、携帯を持ちながら眼鏡をはずした。
寝ぼけた頭に、霞む視界。
遮るものがないまま、いつもの杏とは違って素直な感情を言葉にしていた。
「ククッ。声がぼんやりしてる。はぁ、疲れた、、、。今週は中々会えなかったな。当分今週みたいに忙しくなると思う。週末も俺の用事で会えないし、マメに連絡できずに悪かったな、、、。って、言ってもお前は『良いですよ』って言うんだろうけどな」
自嘲ぎみに話すその声音に疲れが見える。
時計を見れば23時を少し過ぎたところだった。
「今日はもう終わりましたか?」
「あぁ。週末だからって接待で飲んできた」