俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

……どのくらい?
ますます意味がわからなくなる。
体の中にメモリがあれば分かりやすいのに。

困り顔で華に訴える。

「華ちゃん。それは数字で表せるものですか?」

「ふふふ。じゃあ、小早川君と話すのは好き?」

「……そうですね。きちんと最後まで聞いてくれるので話しやすいです」

そうだ。
彼とは自然と会話が繋がっている。
とりとめのない私の話も聞いてくれて、答えてくれる。

「小早川君の隣にいることは?緊張する?嫌な気持ちになる?」

「緊張……はしますけど、嫌ではないです」

騒がしい店内で、ここにいない彼を思い出しながら答える。今この楽しい時間に隣にいてくれたらもっと楽しくなるのに。

「ふふっ。杏?今小早川君の事考えてたでしょ?一緒に食事が出来てたら良かったわね」

華ちゃんの言葉にポッと再び顔が熱くなる。

タパスという軽食の盛り合わせのような料理は夕食の遅いスペインの人達の夕食までの繋ぎのような物らしい。
日本で言うと東海地方のモーニング文化のようなものだろうか。元々は朝の早い人達の昼食までの繋ぎだったらしいモーニングは、いまやメインをはるほどに浸透しているが、繋ぎという意味では似たようなものだろう。

華と恭一の話をしている事で、なんとも言えない恥ずかしさが込み上げてきた。

あぁ……恥ずかしい。

照れ隠しに頭を切り替えようと料理のことを考える。
今日の華ちゃんはぐいぐいくる。
普段も軽くからかわれるような事はあったが、ここまで分析されるなんて!
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