俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

「…………前にさ、俺が見立てるって言ったろ?━━━ちょっと、待ってて」

そういってベットから降りクローゼットを開けると有名なブランドメーカーの大きな紙袋を持って戻ってきた。

「これ。たぶんサイズも合ってると思うからこれ着てみて。一緒に行きたかったけど平日は遅くなるし、週末もいつ空くかわかんねぇからさ。勝手に買ってきて悪いと思ったけど、あの黒のワンピースは、無理」

そういって紙袋ごと渡された。
おずおずと袋を開けて覗いてみると、ワンピースとアクセサリー、靴とバックとストッキングまでもが揃えられていた。

「こ、こんなにもっ。そんなっ貰えませんっ」

ちょっとまって、疎い私でも知ってるようなあのブランドでここまで揃えて幾らになるんだって!
そんな高価なもの貰えないっ!
首をブンブン横に振って小早川君を見る。

「気に入らなかった?でもあのワンピース着るのは無理なんだけど。じゃあ今から買いに行こうぜ。これは又違うときに着たらいい」

小早川君は眉間にシワを寄せてクローゼットにもたれるように腕をくみ、ベットに座ったまま紙袋を覗く私を見下ろしている。

「ち、違いますっ。気に入らないなんてとんでもないですっ!だってこんなに高価なもの受け取れません」

「じゃあこれどうする?買ったもの返しに行くなんてありえないし、お前が着ないんだったら捨てるしかなくなるけど?」

うっ。
いや、でも、だって。
ありがとう、なんて言える値段じゃ……。

「前にも言わなかったか?いい女は『ありがとう』って言っとけばいいんだよ。俺が勝手にしたことをお前は気にしなくていい」
< 165 / 246 >

この作品をシェア

pagetop