俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「分かりました。ありがとうございます」
そういって離れる瞬間、彼の手が私のマウスを握る手に重なりぎゅっと握りしめた。
誰にも見つからないように体でその手を隠し視線も合わさないままその手が離れる。
私も画面から視線を外すことなくそのまま仕事を続けた。
再び彼の靴の音がして、いつの間にか回りも仕事のざわめきが戻ってきていた。
大丈夫。
まだ彼から何も聞いてない。
彼も一応御曹司だ。
私には想像もつかない事があるかもしれない。
大丈夫。
彼の手の温もりが彼を信じさせてくれた。
大丈夫。
彼を信じてる。
マウスをぎゅっと握りしめ、気持ちを落ち着かせた。
とりあえず、説明を受けなければ。
元より白黒はっきりさせたい私は自分の事もきちんと説明できるようにしたい。
今まで彼との曖昧な関係も、やっとはっきり分かったばっかりだ。
『説明してね』
朝以来外回りで合わなかった小早川君に一言ラインに入れて長かった今日の仕事を終えた。
はぁ。
一日中視線が痛かった。