俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

「でも……いいの？杏、色々と言われたい放題じゃないの」

「……まだ大丈夫です。直接言われてるわけでもありませんし、聞かれてもどう答えていいのか分かりませんから」


相変わらず社内にいるときは私に構いに来る小早川君。婚約話が広まっているなか未だに私の近くにいるこの状況はなんとも説明しにくい事になっていた。

『騙されてる女』であったり『セカンドさん』であったり、『使える女』であったり。
何を言われても意味は同じようなことばかりだ。私が悪役になれば気がすむらしい。


「ねぇ。本当に言われてるだけ？」

心配そうに顔を歪める華ちゃんに申し訳なくなる。

「まだ、大丈夫ですよ。今はまだ遠巻きにあれこれ言われてるだけですしいやがらせのような事もありません」

「そう……。何かあったら絶対教えるのよ。小早川のバカにもちゃんと言わなきゃダメよ！」

「はい。ありがとうございます」

大丈夫。
心配して話を聞いてくれる華ちゃんがいてくれるだけで、それだけでなんでも大丈夫だって思えるから不思議。