俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
あの瞬間の足音で誰だとか分かるわけもなくて、でも何処かに特徴がなかったかとか。
自分なりに犯人探しをしてみたもののさっぱり分からなかった。
難しいかおで考え込んでいたらしく、外出から戻った加藤さんが私を読んでいる声に気付かなかった。
「おいっ、おーい。か、さ、は、ら?」
目の前にいきなりドアップの加藤さんの顔があり、呼び掛けられて思わず変な声が出た。
「うえっ!?」
顔を仰け反るように後ろへ引き、その近さにもびっくりした。
「ブハッ。ククク、うえって。クククク。もっと可愛い声出せよ」
離れながら笑い続けている。
「えっ?あ、あぁ。お疲れ様です加藤さん」
椅子をクルリと動かして座ったままだけど軽く頭を下げた。
「どうした?眉間に皺よってたぞ。肩、どうかした?寒かったか?」
にやり、と笑いながら無意識だったあれこれを指摘された。
「あっ。笠原、伝線してるぞ?ほら、足。ぶつけたか?ここ、青くなってる」
そう指された場所を目で追ってみると確かに小さく青く腫れていてその下が踵まで伝線していた。
「本当ですね。ありがとうございます。でも加藤さん、それセクハラですから。フフフ」