俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
なんてことないように言葉尻を気にしながら簡潔に事実だけを口にした。
「さっき、コピー用紙を取りに行って転けてしまったんです。きっとその時ですね」
そう言いながら席を立ちお財布を手に持ってコンビニに行ってくると告げた。
「俺も行く」
そういって何故か着いてきた加藤さんに、『いや、一人でいきたいんですが』と、告げたのは冗談でもなんでもなく、今は周りをあまり刺激したくないなという保身だったのだが、全く気づいてくれることもなく拗ねながら着いてきた加藤さんの目の前でため息をついたのは本気だった。
「おまっ、ため息とか酷すぎるぞ。一緒に行くくらい良いじゃんかよー」
「はいはい。すみませんね。じゃあ行きますよ」
隣に立って歩調を合わせてくれる加藤さんに少しだけ優しく声をかけた。
「加藤さんは何の用があるんですか?」
「えっ?えーっと。そうそう、ちょっと疲れたから甘いもん欲しかったんだよ。笠原は?一緒にいってくれる代わりにお兄ちゃんが買ってしんぜよう」
「えっ?私のもですか?でも、さっきの話の流れで私が買いに行くものってストッキングですよね。それ買ってくれるんですか?軽く変態ですね」
「はっ!!??」
二人ならんでエレベーターに乗り込み、誰もいないのを良いことに加藤さんを変態扱いしてみた。
昨日、今日の色んな事が彼のせいだとは言わないけれど彼のせいでもないとは言い切れないモヤモヤを加藤さんを苛めて少しスッとした。
ごめんね。
加藤さん。