俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
眉を下げて困ったように話す様子は儚げで庇護欲を掻き立ててくる。
「えっと、あのですね。私はいまいち状況と深刻さが分かっていないので、恭一君に任せます」
そう言って恭一君を見た。
「悪い、杏。今週中になんとかするからもう少しだけいいか?」
頭を優しく撫でながら覗き込むように目を合わせてきた彼に頷いた。
私の好きな恭一君の仕草だ。
「っ、……う、わぁ、なんか恭一気持ち悪い。彼女にそんなことしてるの初めて見た」
呆れたように恭一君に視線を向けるキヨさん。
……なんかこの人ちょいちょい言い方がチクチク刺さるな。
「うるせぇな。今までと違うんだよ。キヨに付き合って杏に愛想つかされたらどうすんだ。だから、後一週間だ。それ以上は自分で何とかしろよ」
私の頭におでこをくっつけながら『悪かった』って囁いてくる恭一君を目を見開いてキヨさんが見ていた。
一瞬だったけど、眉間に皺を寄せて悲しそうな苦しそうな表情をしていたのを私は見てしまった。
あぁ。
彼女は恭一君が好きなんだな。
それは、やっぱり。
と、思うしかなくて。
言葉の端々に二人の仲を主張する言い方も私への牽制だったんだろうな。