俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
こういう時どうしたらいいのか分からない。とりあえずお店の中なので「ちょっと近すぎます」と恭一君の頭を押し退けた。
それからそこのカフェでそのまま夕飯を食べて別れることになった。
私の知らない過去の恭一君を色々教えてもらい、彼の散々な女性遍歴を垣間見た。
話しの出来る内容だけでも引くほど酷かったので、実際はもっとなんだろうなと、蔑んだ目で恭一君を見て隣に座っている彼から少しでも離れようとそっと距離をとった。
「えっ、ちょ、杏?過去だから。なんで離れるんだよ若気のいたりだから」
必死になって弁解する恭一君が可笑しくてキヨさんとケラケラ笑った。
「恭一が必死になってる。ありえない。良いもの見せてもらったわー」
「どれだけ脛に傷持ってるんですか。ビックリですよ」
一見和やかな雰囲気で楽しそうに囲む夕飯も、その裏を隠すように当たり障りない話題で繋ぎ止めているだけだった。
恭一君に犠牲になってもらって。
「じゃあ、今日はわざわざありがとうございます。恭一君又明日会社で」
「はっ?送るから。キヨ、お前電車で帰れよ。俺杏と帰るから」
「えっ?恭一荷物は?それにこの時間の電車はちょっと怖いから送ってほしいんだけど」
「はぁ?お前まだ電車乗らねぇの?それに荷物なんて別にねぇよ」
「キヨさん電車嫌いなんですか?」