俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「昔は2回に1回の割合で痴漢にあってたんだよ。この時間ならまだ早いし大丈夫だろ?早く守ってくれる男見つけろよ」
「っ、……じ、自分が出来たからって上から言わないでよ」
「私、痴漢になんて会ったことないので大丈夫ですよ?キヨさんを送ってあげてください」
まだ19時過ぎだし、普段と変わらないしね。
そういうも恭一君は譲らなくて。
「俺が一緒にいるのに一人で帰すわけないだろ?キヨ、悪い、頑張れ」
「分かったわよ。じゃあ笠原さん後一週間だけごめんなさい」
「えっ?は、はい。でも今日は電車で帰ります。もし痴漢にあったりしたら大変!恭一君のお祖母様も待っているんじゃないですか?」
と、まぁ話が進まない打開策が恭一君の車に皆で乗って、キヨさんを送ってからアパートに送って貰うこととなった。
車に乗る位置でも一悶着あった。
先に降りるならキヨさんが助手席に乗るのが一番効率がいいはずだ。コンパクトな車だけど座る席さえあれば私は大丈夫だ。なんせチビだから。
それをぐちぐち文句をつける彼に、面倒臭くなってきて、じゃあ一人で帰ると歩きだしたら渋々了承してくれた。
申し訳なさそうに助手席に乗るキヨさん。
本当に気にしないでいいのに。
キヨさんと別れた帰り道、ちょっと拗ねたように恭一君が口を開いた。
「杏はさ、俺の車の助手席に他の女が乗っても平気なわけ?自分を置いて他の女と帰れとか言うなよ」
視線を会わさずに話す横顔が可愛くて思わずクスリと笑みが漏れた。
「そんな事無いですよ。良いとか悪いとかじゃなくて、恭一君がちゃんと私の事を大事にしてくれているのが分かったから言えた心の余裕ですよ」