俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

「華ちゃん。本当にごめんなさい。だけど、今話すには時間が足りなくて。後まだ整理しきれてないんです。今日の夜、家に来てもらってもいいですか?」

「もぅっ!何でもっと早く言わないの!絶対行くから。ラインには残業してからって入れたけど、定時で帰るよ!分かった?杏も定時であがりなさい!」

勢いづいた華ちゃんに軽く笑いかけて、頷いた。いつものように頭を華ちゃんに撫でてもらう。
なんでこんなに落ち着くんだろう。


朝、決めたはずだ。
やれることはやるって。
頑張れ。
こんなことで動揺してたら駄目だ。

目元に泣いた跡は残るけど、眼鏡をかけて長い前髪で覆っているため全く分からない。
今日、恭一君に会うことはないだろうから彼にバレる事もないだろう。

華ちゃんと定時であがるためお昼もそこそこに仕事に没頭した。昨日のキヨさんの話だと桃山さんの説が一番有力だ。
そうなると、
今日のシャツの件も彼女の仕業なんだろうか。

怖い。
気にしちゃ駄目だと思うけど、フトしたときに彼女を盗み見てしまう。
怖いから真っ正面から見れないけれど。

私が悪いことをして居るわけじゃないのにいくら弟さんの事があったとしても、平然とあんなことができるなんて信じられなかった。
私はそこまでのことを彼女にしたんだろうか。
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