俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
コクリと頭を縦に動かして、頷いた。
再びコップをテーブルに置き両膝を抱える。
今から話すことが自分の想像を越えすぎて口に出すのも怖かった。
「キヨさん、桃山さんの弟さんに部屋に押し入られて怖かった事があったそうです。
で、私に言ったんです。
ストーカー被害をした加害者の家族は、それが公になるとどうなるかしら?って。
でも、自分はそんな事は望んでないって。恭一君と一緒になれればそれでいいと。
桃山さんと恭一君が同じ会社だったのは偶然ねって。
……別れないと今日の朝みたいなことで、き、恭一君に迷惑がかかるわよって」
少し声が震えながら話す私を華ちゃんが呆然と見つめる。
そりゃそうだよね。
彼女のしていることはやり過ぎだ。
どうしてそこまでするのか私には分からなかった。今までちゃんとした恋愛もしてきてない私がいうのもなんだけど、でも私なら好きな人の迷惑になるようなことはしない。
好きな人が幸せでいてくれる事を願う。
相手の(この場合恭一君)素行の悪さから見守ることが出来なくなった……とか?
うわぁ。
これしっくりくる。
そう思うとキヨさんの恭一君に対する執着となりふり構わない怖さが薄らいで、客観的に見ることができた。
私が考え込むように自分の頭の中を整理していると、華ちゃんが不安そうに声をかけてきた。
「杏?大丈夫?ねぇ。それって脅しじゃない。ストーカーの件で桃山の弱味を握って、手出しのできない会社で桃山を使って嫌がらせをする、させる?小早川君から手を引かないとまだ続けるわよって事でしょ?で、今日の朝になるのね」
はい、と頷いた。
「…………濃い一週間だったわね」
私を不安がらせないように、あえておどけて華ちゃんが話す。
それに苦笑いをして同意した。
「なんか、ここまでくると怒りも通り越して怖くなるわ。あぁ、だから朝あんなに興奮してたのね」
その通りなのだが言葉にすると恥ずかしすぎる。小さな声で「忘れてください」とお願いした。
あれは無いわ。
クスクスクスと顔を見合わせて笑いあった。
「とりあえず、これがここ最近の出来事です」