俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
飲み干したコップを両手で掴み、俯きながらぎゅっと握り締めた。
恭一君は今までとは違うと言ってくれた。
大事にしてくれてはいる。
「だけど、恋愛経験の数だけをこなしてきたような恭一君なんです。信じてるんですよ。信じてるはずなのに、不安になるんです」
「ブッッ。ご、ごめん。ちょっと言い方が面白かった」
華ちゃんは、飲んでたレモン酎ハイを吹き出して、慌ててティッシュでテーブルをふいていた。
「面白いところありました?」
少しトロンとぼやけてきた目を華ちゃんに向けて首をかしげて聞いてみた。
「ごめんごめん。何でもないわ続けて?」
はい。と、もう一度視線を落とす。
「月曜日、キヨさんと話した後物凄く嫌な気持ちになったんです。恭一君にもちゃんと向き合えなくて……初めて未読スルーしちゃいました」
うふふふふ。
と悪戯に目を緩ませて笑ってしまった。
「あら。小早川君、煩かったでしょう?」
「返信しなきゃなーって思いながらもいつの間にか寝てしまってて。朝起きたら着信とラインが増えてて青ざめました」
恭一君の怒っている様子が想像できてクスクスと二人で笑う。でも、「私は怖かったんですからね」と華ちゃんに訴える。
「朝起きて、うわって思ったんです。だけど、私ばっかり怒られるのも腑に落ちないと思いません!?」
「過保護すぎるわよね」
呆れたように笑う華ちゃん。だけど、「杏のことが心配なのよ」と優しく宥めてくれる。
「うちの父より心配性ですけどね」