俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
呟くように話す私の頭を、優しく撫でられて、お酒も回って更に気持ちいい。
うっとりと癒されながらウトウトしてきた。
遠くで家のチャイムが聞こえた。
顔を持ち上げ、ぼんやりする頭で華ちゃんと見合わせる。
もう一度ピンポンと、音が鳴り誰かが来たのだと気づいた。
恐る恐る近づくと、「杏?」と恭一君の声がする。
慌ててドアを開けると恭一君は安心したように息を吐き中に入ってきた。
「ど、どうしたんですか?」
ほっとした表情は一瞬で、すぐに眉を寄せて怒ったような声を出した。
「何回連絡したと思ってんだよ。あんな意味深なライン送ってきただけでその後放置って……杏?お前飲んでんの?あれ?華さん?何この状況……うわっ、、」
恭一君はすぐに小言を言い始めたけれど、酒の臭いが充満する小さな部屋と華ちゃんの存在に気づきスーツの上着をソファーへ掛け、私の手を手を引きながら華ちゃんの向かいに座り込んだ。
恭一君への文句を言っていた筈なのに、いざ目の前の恭一君を確認すると会いたくて堪らなかった事に気づいて、思わず飛び付いてしまった。
咄嗟の事で少しよろけながらも私を抱き抱え、慌てたように「どうした?」と優しく声をかけてくれる。
胡座をかいて座るその胸に抱きつくような形で首を左右に振り続けた。なんでもないとでも言うように。