俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「ねぇ、意味深なラインって何?そんな慌てちゃう内容だったの?」

にやにやとからかうような華ちゃんの声にハッ、とした。

そうだよ!華ちゃんも居たんだった!
は、恥ずかしいっ。
咄嗟に恭一君の腕から抜け出し、飛び上がるように恭一君との間に距離をとった。

正座をして顔を下に向け頭を垂れる。

「は、華ちゃんごめんなさい。恥ずかしすぎる」

杏に抱きつかれて、苛立っていた筈の感情が落ち着いていくのが分かった。それなのに飛び退いて離れる杏にあからさまに不機嫌になる。

「『考えたいことがあるので少し時間を下さい』なんて入ってきたら誰だって慌てるだろうが」

拗ねるようなその口調に華ちゃんが吹き出して笑った。

「な、何?それ見てフラれるとか思ったの?ぶっ、アハハハハハ。駄目、堪んない。可愛いところあるのね。アハハハハハ」

憮然としてあぐらをかく恭一君に、笑い転げる華ちゃん。お酒の力もあってだろうけど、こんなに笑う華ちゃんは初めて見た。笑う華ちゃんを見てると何故か私も楽しくなってきて、笑っている理由は分からないけどニコニコ顔が綻んだ。

ひとしきり笑った華ちゃんが、笑いすぎて目尻に溜まった涙を拭いながら私を見て優しく話し出した。


「杏?大丈夫よ。この俺様は杏の事をちゃんと好きよ。きっと。だから何にも心配しなくていいわよ」



恭一君は一人訳が分からないように首をかしげていたけれど、華ちゃんのその台詞は私の不安を消し去るように自信を取り戻してくれた。
恭一君の側を離れようとも、離れたいとも思っていなかったけれど、周りから一言そう言ってもらえるだけで私の中でそれでいいんだって認めて貰えたような気になった。

嬉しくて、「うん」と返事をした後の記憶がなく、気付けばいつものように恭一君の腕に抱かれてベットで目が覚めた。
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