俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

「杏、今からちょっと眼鏡預かるから」

私よりも早く終わった華ちゃんが、眼鏡をもって席をたつ。

眼鏡を持っていかれたら私本当になにも見えないんですけど。

そう言いたくて振り向きたくても美容師さんが髪を伸ばしたり、丸めたり、なんとなくしか分からないけれど色々してくれている。
短くなった前髪に見やすくなった景色。
実際は眼鏡がないから見えないけど。
視界が明るくなったのは分かった。

その後もなぜか化粧までしてもらい、あちこちらさわられた。


首から上が一通り終わって、「お疲れさまでしたー」と椅子をクルリと回される。
せっかくだから近くで鑑が見たいなぁ。
と思っていると華ちゃんがやってきて、奥にある着付けのコーナーに連れていかれた。

そこにあったのは、この前恭一君からもらった今日の衣装だ。

「えっ?なんでここにあるんですか?」

サーモンピンクのデコルテスパンコールつきのノースリーブワンピースにラメ入りストッキング、同色のワンストラップのローヒールパンプスに黒のビジューつきバックまで。

恭一君の揃えてくれたものが何故ここに?

「小早川君に持ってきてもらったのよ」
「恭一君に?えっ?でも私家に置いてきた筈ですが?」
「この前合鍵渡したんでしょ?」
「は、はい。……えっ?あ、あぁ。なるほど」
「はい、着替える!」

< 225 / 246 >

この作品をシェア

pagetop