俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「杏、今からちょっと眼鏡預かるから」
私よりも早く終わった華ちゃんが、眼鏡をもって席をたつ。
眼鏡を持っていかれたら私本当になにも見えないんですけど。
そう言いたくて振り向きたくても美容師さんが髪を伸ばしたり、丸めたり、なんとなくしか分からないけれど色々してくれている。
短くなった前髪に見やすくなった景色。
実際は眼鏡がないから見えないけど。
視界が明るくなったのは分かった。
その後もなぜか化粧までしてもらい、あちこちらさわられた。
首から上が一通り終わって、「お疲れさまでしたー」と椅子をクルリと回される。
せっかくだから近くで鑑が見たいなぁ。
と思っていると華ちゃんがやってきて、奥にある着付けのコーナーに連れていかれた。
そこにあったのは、この前恭一君からもらった今日の衣装だ。
「えっ?なんでここにあるんですか?」
サーモンピンクのデコルテスパンコールつきのノースリーブワンピースにラメ入りストッキング、同色のワンストラップのローヒールパンプスに黒のビジューつきバックまで。
恭一君の揃えてくれたものが何故ここに?
「小早川君に持ってきてもらったのよ」
「恭一君に?えっ?でも私家に置いてきた筈ですが?」
「この前合鍵渡したんでしょ?」
「は、はい。……えっ?あ、あぁ。なるほど」
「はい、着替える!」