俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
勢いよく顔を近づけながら手を差し出される。
えっ?何この手。
すると今まで遠巻きにこちらを眺めていた人達が慌てたように寄ってくる。
何?何これ。
ちょっ、怖いんですけど。
あっという間に取り囲まれるように回りに知らない男性達の人垣ができて、ビックリして華ちゃんを見上げ……!!たのに、華ちゃんがいない!?
えっ?華ちゃん!?
口々に何かを話しかけてくるが、あまりの人の多さで誰が何を言っているのかさっぱり分からない。
「あの、ちょっと、すみません。通してください」
必死にお願いするも誰も話を聞いてくれず、「すみません、お願いします」と繰り返しお願いするしかなかった。
息苦しいわ暑苦しいわ煩いわ、そろそろ我慢の限界だった。
大きく息を吸い込み、「あの!」と声を張り上げた瞬間、会場の出入り口から「キャーーー」と言う女子の黄色い声が聞こえてきた。
遠くできゃあきゃあ可愛い声とぶ。
何があったのか彼らをどかして見てみたいけれど、どうにもこうにも抜け出せない。
もう一度声を出そうか。
そう思って再び息を吸い込むと、急に彼女達の黄色い声が近くで聞こえた。すると囲まれるように回りに居た男の人達が道を作るように2つに別れる。
モーゼのようだ。
あっけにとられていると、そこを優雅に歩く恭一君が不機嫌な顔で私を呼んだ。