俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

準備も進み、総務部長のお話があって配置に付く。

「それでは今から関連会社の方々がお見えになります。ご挨拶だけはしっかりとしてください。では、宜しくお願いします」

「「「はい」」」


私の担当は受付でのお土産渡しだ。

緊張する私に、とりあえず「笑ってなさい」と華ちゃんが教えてくれた。

よし。

次々と入ってくる協賛会社の役員の方々が記帳をしている間にお土産を準備して、

「本日はありがとうございます。ごゆっくりお楽しみください」

と、視線をしっかり合わしテンプレートの言葉を繰り返し、ぎこちなくても精一杯の笑顔を向けた。

何故か皆さん目を見開いて一瞬立ち止まってから受け取っていくけれど。

疑問に悩む暇もなく次々にお客様が入ってくる。
後ろがつかえるから止まらないでほしいのに。


暫くすると、「小早川建設様ですね」と受付を担当している女の子の声が聞こえた。
思わず目をやると、恭一君よりも少しだけ背の高い優しそうな男性が立っていた。

もしかしたら……お父さんかも。
すると、「お疲れ様です」と聞きなれた恭一君の声も聞こえてきた。

その男性の隣に立って、総務の方々に挨拶をしている。

やっぱり。

思わず顔が綻び、私に気づいた恭一君と視線を絡ませて微笑みあった。


目の前に来た恭一君のお父さんと、恭一君。
━━━━━━━そしてキヨさん。

キヨさんは恭一君の腕に手を絡ませて、嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
< 234 / 246 >

この作品をシェア

pagetop