俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「……笠原さん?驚いた。とっても可愛くなったのね。普段は隠していたのかしら」
「いえ。そんな事は……」
「じゃあ、又後で。杏、頑張って」
周りの興味津々な視線と険悪な空気が漂う中、これ以上受付で話すわけにもいかず恭一君がお父さんの後をおって会場へ入っていった。
キヨさんをエスコートしながら。
暫くその後ろ姿が頭から離れなかった。
気持ちを切り替えて仕事に没頭しようとしても、二人の並んだ姿と、前に聞いたキヨさんとの関係に胸が痛い。
『彼、キス魔でしょう』
彼女の声が頭の中で繰り返し頭に木霊する。