俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「おい、キヨ!変なこと言うなよ」
そう言って離れた私を引き寄せる。
呆れたように華ちゃんが話を戻して、例のシャツを取り出した。
「はいはい。小早川君のくだらない過去は後で話し合って。で、桃山さん?杏のロッカーと、コレ見覚えある?」
「うわっ、マジか」
驚いた加藤さんが華ちゃんからシャツを奪ってまじまじと眺めた。
「っ、」
息をのむ桃山さん。
「姉ちゃん!」
避難する光希君に目を潤ませて桃山さんが認めた。
「……そうよ。止まらなかったのよ。ずっと、加藤さんが好きで……振られたけど諦めきれなくて。地味で誰にも見向きもされない笠原さんが加藤さんと一緒にいる意味がわからなかった!」
桃山さんは目からポロポロと涙を流し手に持っていた鞄からハンカチを出した。
「その内小早川君が入ってきて、また笠原さんに絡むようになって。なんであの子なの!?あの子ばっかり狡い!」
「……キヨ、あのシャツはお前の指示か」
「違うわよ。私が言ったのは少しでいいから困らせてって言っただけよ。何してるかなんて知らないわ」
フンッと、鼻で笑う。
「桃山……わかんねぇか。笠原はお前とは違う。あいつは人を羨むことはあっても、妬むことはしないんだよ。ちゃんと努力してんだよ」
加藤さんは、シャツを華ちゃんの持っていたショップの袋に戻しゴミ箱に投げ捨てた。
「おい、そこ。杏の事をわかった風に言うなよ」
「ブッ、小さい男だな」
空気を読まない恭一君のやきもちに、場が和む。