俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
光希君が泣き崩れる桃山さんを支え、頭を下げた。
「皆さん、本当にすみませんでした。また後日謝罪に参ります。姉ちゃん、今日はもう行こう?」
慌てて向き合い、私も頭を下げた。
「いえ、こちらこそ話していただいてありがとうございました」
加藤さんがドアを開け、桃山姉弟は帰っていった。
「光希こそとばっちりだよな。なぁキヨ。関係ねぇ奴巻き込んでお前は高みの見物か」
「っ、何よ。あの子と今までの子と何が違うのよ!」
キッ、と睨んで指を指される。
うわぁ。怖い。
でも、キヨさんがこうなったのは恭一君のせいだと思うとかわいそうになってきた。
「恭一君。思ったんですけど、きっと恭一君が誠実な恋愛をしてきていたらキヨさんだってもっと恭一君の事信用したと思うんです。今回、私もかなりとばっちり感満載でしたけど、キヨさんの気持ちもわかる気がします」
キヨさんの目が見開く。
「いや、あの分かる気がするだけで、そんな行動力は私にはありませんが」
華ちゃんと加藤さんの笑い声がする。
「ここに来て小早川君にダメ出しするなんて、やっぱり杏最高!」
「お前どんだけだよ」
「キヨさん……それでもキヨさんが恭一君の事を想っていたように、それでも私も好きになってしまったんです。……残念ながら」
「おい」
「認めてもらえなくても結構です。だけど、恭一君の困るようなことだけはしてはいけないと思います」
「っ、」
キヨさんの強がって眉間に力を入れていた瞳からポロリと涙が溢れる。
「恭一君?」
「あっ?」
「あんまり過去のいざこざに巻き込まれるような事があったら私も考え直しますからね。遊びなら、今すぐ別れてください」
「いやっ、ちょっ、違うって」
「ぷっ、あははははは。恭一が情け無さすぎる。おじさまにチクろっと」
私と恭一君のやりとりでキヨさんが笑いだした。目に涙を浮かべて、
「本当に違うのね」
そう悲しそうに呟いた。
「キヨ、煩い。弱そうに見えてこいつはちゃんと自分を持ってるんだよ。外見の可愛さにも惹かれたけど、俺がちょっとでもよそ見したりするとこいつ絶対あっさり俺の事見切りつけるぞ。
杏?違うから、まじで信じて。
なぁ、お前は誰のだよ」
「ふふふ。今日はそんな強気で大丈夫ですか?違いますよね?恭一君は誰のものですか?」
恭一君は驚いたように私を凝視して、蕩けるような甘い声で言葉を繋ぐ。
「俺は、お前のだよ」
満足そうに微笑みながら。