俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
3年目となった私は今年の新入社員イチでもあり、同系列会社の御曹司でもある小早川 恭一(こばやかわ きょういち)君の教育係となった。
彼の父親と私の勤めるこの一ノ瀬建設の社長とが旧友であり、武者修行に出されたらしいのだ。
170センチ無いくらいの少し低めの身長と癖のある焦げ茶色の髪をくしゅくしゅに無造作にまとめ、私より小さいんじゃないかという小さい顔に、これまた私より大きいんじゃないかという二重の目が、チワワのようで、入社当初からワンコ王子と呼ばれていた。
見た目よし、家柄よし、性格よしのハイスペックな彼が私の初めての教育係となった。
見た目を裏切らず、爽やかな受け答えに常にニコニコしている彼を教育するのは大分気が楽だった。
教えるの、初めてだしね。
それに、きっと彼に私が付いたのは一番害が無いからだ。
150センチしかない身長に、長い前髪を目にかかるあたりで真っ直ぐ切り揃え、顎のラインまでしかない真っ黒な髪はいわゆるおかっぱで、更に顔を隠すようにしている大きい黒渕眼鏡をしている私は、自分でいうのもなんだけど、こけしに似ていると思う。
もしくは今流行りの子供アニメに出てくるトイレの花子さんだ。
彼のように華やかな人を相手にペアを組むとなると、女子社員のなかで必ず起こるであろう衝突も、私とであれば避けられる事間違いなしの安全パイがこの私、笠原 杏(かさはら あんず)だ。