俺様御曹司による地味子の正しい口説き方


「杏さん」


名前を読んでみれば、はい?と無邪気にこちらを向く。先程名前を呼んだときは軽く動揺が見られたのに、今度はもういつも通りの杏だった。

おもむろに、杏の眼鏡に手をかけて外してみた。いつもは前髪と大きい黒渕に邪魔された目が、ビックリして自分を大きく見開いている。
初めて見た杏の瞳は真ん丸と大きく、何かが乗りそうなほど睫毛はくるんと長くて多かった。
目力がありすぎて、ドキリと心臓が高鳴る。
慌てて眼鏡を戻そうと手を伸ばしたときに、杏の頬を自分の手が擦った。
その頬の柔らかさに思わず眼鏡を落としそうになった。


「わ、、わりぃ。返す」


おいおいおい。
こんなこけしみたいな地味な女の目力に動揺するなんて、ギャップ負けじゃねぇか。
…………チッ、、マジか。

明らかに動揺する小早川は、華が冷ややかな目で自分を眺めていることに気がつかなかった。
それほど周りが見えてなかったのだ。


「あ、、ありがとうございます。ビックリしました。見えなくなるので止めてくださいね」


そんな華と小早川の態度に気付きもせず、杏は眼鏡をかけ直した。


「そろそろ行きましょうか。華ちゃん、午後からも頑張って下さい。良かったら又ご飯食べましょう」


杏の言葉に頷いて、揃って席をたった。
まだ胸の動悸が収まらない。





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