俺様御曹司による地味子の正しい口説き方


「杏?来月から加藤が戻ってくるみたいよ?」


加藤?初めて聞くその名前と華の話し方からそいつが男だと分かった。
杏を盗み見るも、その表情も雰囲気もいつも通りだった。


「誰?」


視線を華に向け、言葉を取り繕うことなく話す。


「私達の同期よ。去年関西に転勤になってね。元々1年か2年の話だったからちょっと早まったのね」


「加藤さん、久しぶりですね」


「戻ってくることで、久しぶりに同期会があるみたいだけど、杏はどうする?」


「……私は止めておきます。元々同期会にも出席したことも殆ど無いですし、私は華ちゃんとこうしてランチするだけで充分です」


なんだ?
声も表情も、変わりは無いのに纏う空気が何か違う。
いつも通りなんだ。
そう、いつも通り過ぎるんだ。

………………同期だろ?


訝しげに華を見て、説明を求める。
睨むような俺の視線に、ため息を付いて頷いた。
後から教えろよ。



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