俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「もしもし、華ちゃん?終わったよ。今から向かうから」
『杏?終わったのね。あのね、本当に華の申し訳ないんだけど、今日行けなくなってしまって。代わりにちゃんとエスコートさせる人を送っておいたから、そのまま美容室の前で待ってて!大丈夫。杏もよく知っている子だから。本当にごめんね。ちゃんと楽しんでくるのよ!』
「えっ?えぇ???は、華ちゃん?」
一気に捲し立てられて、勢いのまま電話も切られてしまった。
呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。
薄暗くなってきた駅前の美容室の前で携帯を握りしめ、頭が真っ白になる。
すると、一台の車が目の前に止まった。
ハザードをたいて、運転席から降りてきた男は、立ち尽くす杏の前にたち、頭を軽く撫でた。
ビクリと、肩がはねあがり、やっと目の前に立つ男の顔を見た。
「杏。何度も呼んだんだぞ?遅くなったか?わりぃ」
普段会社で着るようなスーツと違い、タイトでスタイリッシュなダークグレーのスーツに身を包み、可愛らしく見えるその眼差しも、今日は何処かキリリと男らしくも見えた。
「………………こ、小早川君?…………どうして?」
華の突然のドタキャンに心細くなり、目の前が真っ白になっていた杏の目にはうっすらと涙が浮かび、その大きな瞳を潤ませて見上げられた恭一は、一気に顔が赤くなり、右手で口元を押さえた。