俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「……どうしました?」
知っている人に会えた安心感からか、それが、恭一であったからか、真っ白だった頭のなかも少しずつ動き出した。
「…………とりあえず、乗れ、、、」
杏の肩を抱き寄せ、助手席のドアを開ける。されるがままに車に乗り込み、車は静かに走り出した。
しばらく無言で何処かを走り、普段車で移動することの無い杏は何処を走っているのかさえ分からなかった。
見たことの無い駐車場に車が止まり、恭一が私を見た。
「クククッ、どうしてこうなってるのか全く分かって無いみたいだな。華さんから聞いてないのか?」
恭一から華の話が出て、華の言っていたエスコートの相手が恭一であることが分かった。
「…………さっき、華ちゃんから行けなくなったと連絡を貰って、変わりの人を送っておいたと言われただけなんです。ビックリして呆然としていたときに小早川君が来てくれて、、、」
くるりと体を恭一のほうへ向け、ペコリと頭をさげた。
「ありがとうございます」
いつもの、長い前髪をサイドで編み込まれて、その大きな瞳を遮るものが何もないその小さな顔で、ニコリと緩ませる。