俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
今日の華とのディナーの為に、杏は全身着飾っていた。
いつもはこけしのような髪型も、前髪をすっきりさせ、後ろも軽くうちまきに巻かれている。
マスカラや付け睫は必要の無いその大きな瞳にも軽くラメの入ったシャドーが入り、更に瞳を大きく見せた。
ほんのり赤く染まるチークも、杏のその透き通るような白い肌によく似合い、グロスを塗ったそのぷるぷる震える唇は、今すぐ奪ってしまいそうだった。
「………………ッ、、、、」
はぁ。
思わず視線を外した恭一に、杏は首を傾げる。そのささやかな仕草さえも今の恭一にとっては煽る材料となる。
「…………一気に自覚したわ」
ハンドルに両手を回して顔を埋めてため息を付いている。
何も言えず、恭一を見つめていると、ハンドルの隙間からこちらを見ていて、視線が交わった。
な、なんだろう。
ドキドキする。