俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「小早川君は、このお店よく来るの?お店の人、小早川君のこと知ってたね。普段あんまり思わないけどやっぱり御曹子?なのね。小早川君と付き合う女の子は、こんな素敵なお店に来るんだ。ふふふ。さすがギャップリオ」
ブッ、と恭一が吹き出す。
それ、やめろ。とブツブツ呟いている。
「…………ここは、奥の個室が落ち着いた雰囲気になってんだよ。親父が気に入ってるからよく来てただけだ。女と来たことなんかねぇよ」
いつもなら、御曹司という肩書きをも使って周りを円滑に進めてきた。
女の子達だって、この外見と肩書きを見て近づいてきているようなものだ。使えるものは使う。
そうやってきたはずなのに、杏には通用しない。反対に使いたくなかった。
杏の口からでた『御曹司』という言葉に初めて嫌気がさした。
「へぇ。ご家族仲良しなんですね」
自分とは過ごす時間も住む世界も違いすぎる華やかな世界が想像できない。
クスクス笑いながら、家族の間での恭一を想像する。
「どうした?」
一人何か楽しそうな杏に首を傾げる。
「小早川君がお家ではどんな感じなのかなって思ったんです。ワンコ王子ですか?俺様王子ですか?想像してたら面白くなっちゃった」
「…………どっちも俺だよ。外面が良いだけだ。かわんねぇよ。何?俺の事知りたい?」
何故か恭一が嬉しそうだ。
「んーーー人並みには。だって、『御曹司』ですよ?言われなれてるかも知れませんが、その華やかな感じとか、私の世界には無かった人達ですからね。こうやって一緒にお話しているのも、夢みたい」