俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「……あんた、そんな風になるのね。来るもの拒まず去るもの追わずのろくでなしだと思ってたわ」
その様子を見ていた華が面白そうに言う。
「それでよく杏さんを任せてくれましたね?」
「そうねー、、勘、かしら?」
「じゃあその勘に感謝ですね。それで自覚できましたし。それに、僕もビックリなんですよ。こんな風に思うのも初めてなのでどうなるのか僕も分かりません」
「……なるほどね、、それにしても少しやりすぎじゃない?」
うっうっうっ。と、半べそをかきながら黙々とお弁当を食べる杏を横目に華は呆れたように恭一を見る。
「……これぐらいしないとこの初心者には通じないんだよ。回りくどいことしたって絶対気づかねぇだろうし、足りねぇくらいだ」
━━━━すぐにでも分からせてやるよ。
恐ろしい言葉が聞こえてきた。
大好きな華ちゃんがいて、いつもなら幸せな時間も、出来るなら早く逃げ出したかった。
もういっぱいいっぱいだ。
お腹もいっぱいだ。
今日は早々に立ち去ろう。
うっうっうっ。
「華ちゃんごめんなさい。今日は先に失礼します。またゆっくりお話ししてください」
ヨロヨロと立ち上がり、席を立つ杏。
フラフラに弱っている姿も堪らない。
「悲壮感たっぷりな所がまたそそられるわね。はぁ可愛い」
「あんたもけっこう危ない奴なんだな」
危ない二人の危ない会話は杏の耳には入らなかった。
「杏の事、泣かせたりしたら承知しないから」
「ハハッ。覚えとくよ」