俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「こ、小早川君?車を見せてくれるんじゃなかったの?」
「そうよ!その後ご飯でもって思っていたのに」
「後少しで帰りも一緒になることも少なくなるんだから、今日は私たちと行きましょう?」
矢継ぎ早にお姉さま方から必死の攻防戦が始まる。
その勢いに、形勢逆転の兆しが。
頑張れお姉さま。
伸ばした手を引っ込めて、前に出した体を後ずさるように後ろへ傾けた。
この内に逃げようか。
「じゃ、じゃぁ私はさ、、、、」
「杏?」
言い逃げるように後退しながら、『先に失礼します』と言おうとしたら、言い終わる前に言葉を重ねて、低い声と共に名前を呼ばれた。
ひぃぃぃぃぃ。
ワンコの仮面が剥がれてますっっ。
「すみません、僕の車は殆ど二人のりみたいな物なので、皆さんとご一緒は出来ないんです。それに、助手席には彼女しか乗せない主義なので、今日は失礼しますね。さっ、杏?帰ろうか」
言いながら、お姉さま達の輪をすり抜けて、私の手を取り、甲にキスをした。
私の声にならない悲鳴と、お姉さま達の悲鳴が駐車場にこだまする。
完全に反抗する力を失った私の手を掴み、『それでは』と歩きだした。