俺様御曹司による地味子の正しい口説き方


少しの隙間も許されないほど強く押し付けられた唇。零れる吐息まで飲み込まれているようで、体の芯まで熱く、苦しい。


「…………ふっ、、、んん、、、、」


唇が一瞬離れた隙に大きく息を吸い込む。
口を開けたと同時に性急に捩じ込まれる恭一の舌が、歯列をなぞり、私の舌を絡めとる。

甘く深すぎるキスにもう何も考えられず、恭一の舌を追いかけていた。

いつのまにか唇も離れ、くたりと恭一の胸に倒れこんだ背中を優しく撫でてくれる。
その手が気持ちよくて、温かくて、そこが恭一の胸のなかに居ると言うことを忘れていしまっていた。


「………………ふっ、可愛いな」


一気に現実に引き戻されて、腕の中から飛び抜ける。
ほんのり薄暗くなってはきているものの、まだ少し明るいこの季節。他に車はいなかったものの、こんなところでなんてことを…………助手席の足元に隠れてしまいたい。
私なら、、、入る、な。

「…………さて、選んだか?」

現実逃避で自分を落ちつかせていた筈なのに、ニヤリと含んだ笑みを浮かべた恭一の声でやっぱり引き戻される。
はぁ。
王子さまは、どこまでも俺様らしい。




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