俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
足元にピザが転がっている。
そういえば、夜ご飯食べてなかったな。
恭一はまだ何故か固まったままこちらを見続けていた。

「あっ。これ、作ってくれたんですか?」

恭一の手元には市販の焼くだけのピザが2枚と、トマトとモッツァレラチーズのサラダがあった。
落とした一枚のピザを、恭一の足元から拾い、

「ふーふーしたら食べれそうですよ?」

と、別の皿に乗せた。
うん。これは私が食べよう。

一向に動く気配のない恭一の目の前で手をヒラヒラさせて、おーい、と呼び掛けてみた。
ハッと、ようやく反応したと思ったら、口元を手で隠し、視線を逸らしながら私から一歩後ろに距離をとった。

「どうしたんですか?」

なんなんだ一体。
いつものゴウイングマイウェイな恭一とは明らかに違っていて、対応に困る。

「………………っ、あ、、、頭ちゃんと乾かせ」

視線を戻すこともせず、そらしたままで呟かれた。

「あー、、、ドライヤーの場所が分からなかったんです。でも、私短いですし、そのまま寝ちゃうときもあるので大丈夫です」

この時期蒸し暑いからドライヤーも億劫になるのよねぇ。
家ん家暑いしね……。

借りたタオルで頭をガシガシ乱暴に擦る。

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