金木犀のエチュード──あなたしか見えない
詩月くんのお母さんは詩月くんとの実力の差を感じているわたしに、「焦らなくていいのよ」と言いながら、レッスン後に課題を出す。
詩月くんの演奏に近づきたい、そう思えば窮屈な基礎練習も難しい課題も、以前よりずっと楽しかった。
詩月くんが山下公園で街頭演奏を行う時には、アランにも会えた。
アランの側にはいつも白いネコがいた。
コンクールの数日後、アランから興味深い話を聞いた。
「詩月からリリィの手紙を受け取ったんだ」
アランはそう切り出し、白いネコを抱きかかえた。
「全く、私はリリィの術中にはまっていたんだ。なあ、クレセント」
白いネコがアランの腕の中、アランを見つめて鳴いた。
「君のお婆さんはこいつに詩月の弾く演奏を覚えこませて、私と詩月が出会うよう仕組んでいた。コンクールでの詩月の『懐かしい土地の思い出』もリリィの計算だったのだろう」
詩月くんの演奏に近づきたい、そう思えば窮屈な基礎練習も難しい課題も、以前よりずっと楽しかった。
詩月くんが山下公園で街頭演奏を行う時には、アランにも会えた。
アランの側にはいつも白いネコがいた。
コンクールの数日後、アランから興味深い話を聞いた。
「詩月からリリィの手紙を受け取ったんだ」
アランはそう切り出し、白いネコを抱きかかえた。
「全く、私はリリィの術中にはまっていたんだ。なあ、クレセント」
白いネコがアランの腕の中、アランを見つめて鳴いた。
「君のお婆さんはこいつに詩月の弾く演奏を覚えこませて、私と詩月が出会うよう仕組んでいた。コンクールでの詩月の『懐かしい土地の思い出』もリリィの計算だったのだろう」